ふとしたことがきっかけで、ものすごく人間が汚く思い、何にも触れたくなくなることがあります。なぜこんなことが起きるのかと申しますと、自分で自分に不誠実なことをした時になってしまうようです。例えば、気持ちの移り変わりを誰かの所為にしてみたり、言い訳をしたり、本当のことを喋らなかったり。そうして生きていきますと、私の心の中に淀んだ汚いものが沈み込んでいきます。つまりはキャパシティオーバーになった時に、私は人間が嫌になります。どうして人間に生まれたのかを哲学しても、何も解決しないのです。病院で処方された薬を少し多めに飲み込むことで私の淀みは少し淡くなります。しかし私は処方された薬を飲み込んでも何も解決しないことを知っていますので、身体を、心を、ごまかしてごまかしてなんとか生きながらえるのです。気色悪いと思う人間と一緒に、自分も人間であることをなるべく見ないようにして。
胃の入り口を握り搾られたような気持ち悪さに、死んでしまいたいと思う。学校のトイレで、吐けないのに吐こうと努力する。今人に会ったらすべてをぶつけてしまいそうで怖かった。なんてことをしてしまったんだろう。これも一つの経験だと、言える人のようになりたい。私にはそんな勇気がない。みんなそう思ってくれない。見える場所に傷が残っている所為で。しかし私はそれを増やそうとしてしまう時もあるので、つくづく人間は気持ち悪く、矛盾している生き物だと考えながら、なぜ自分は泣けないのか考える。
自分を傷つけたって、胃の中のものを吐いてしまったって、何もすっきりしない。この両目から塩水を流して、誰かに縋れたのなら、何かが変わるのだろうか。この間町のクリニックで私の前に立ちはだかった男に、ごめんなさい、傷つけたくなかった。と言えていたなら、私はどうなっていたのだろうか。こんなみじめな思いをせずにいられただろうか。苦しい、どうすればいいのですか。先生。また病院に迎えにきてください。嫌いなんて嘘です。でも愛することが出来ないのです。こんなことを考える私は嫌いですか。どうすればあなたの納得いく私になれますか。
結局は自問自答で終わり、私は涙ぐむこともなく、薬を飲んでから日常に戻るのだ。
胃の入り口を握り搾られたような気持ち悪さに、死んでしまいたいと思う。学校のトイレで、吐けないのに吐こうと努力する。今人に会ったらすべてをぶつけてしまいそうで怖かった。なんてことをしてしまったんだろう。これも一つの経験だと、言える人のようになりたい。私にはそんな勇気がない。みんなそう思ってくれない。見える場所に傷が残っている所為で。しかし私はそれを増やそうとしてしまう時もあるので、つくづく人間は気持ち悪く、矛盾している生き物だと考えながら、なぜ自分は泣けないのか考える。
自分を傷つけたって、胃の中のものを吐いてしまったって、何もすっきりしない。この両目から塩水を流して、誰かに縋れたのなら、何かが変わるのだろうか。この間町のクリニックで私の前に立ちはだかった男に、ごめんなさい、傷つけたくなかった。と言えていたなら、私はどうなっていたのだろうか。こんなみじめな思いをせずにいられただろうか。苦しい、どうすればいいのですか。先生。また病院に迎えにきてください。嫌いなんて嘘です。でも愛することが出来ないのです。こんなことを考える私は嫌いですか。どうすればあなたの納得いく私になれますか。
結局は自問自答で終わり、私は涙ぐむこともなく、薬を飲んでから日常に戻るのだ。
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今私は自分で作った夕飯のパスタを、口から出さないようにと必死です。材料は全て買ってきたばかりのものなのになぜこんなにもどしそうなのか。ゲロ吐きたいけど苦しいの嫌だから吐きたくない。お腹も痛くなってまいりましたが、正露丸飲めば治りますかね。
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消したいと思う過去を思い出すからだめなのです。思い出すから忘れられないのです。
数学の先生が言っていたことを思い出した。人の持ってる忘れるという機能はすばらしい、とかなんとか。
そんなことはしったこちゃあねえのです。私は今この私が変わっていって今書き綴っている時に感じているものを感じられなくなることの方が怖いのです。物事を忘れるのが怖いんじゃないのです。その時に何を感じていたかが思い出すことが出来なくなることが怖いのです。赤いマニキュアを爪にぬり、適当な髪ゴムで髪を結って、明日の授業をさぼってしまえばすべて楽になると考えている単純で馬鹿な自分がこの文章を打っている時に何を考えているのかが怖いのです。思春期にやらなければいけないことをさぼったせいで、私の体は人より脆く出来上がってしまいました。精神も同様です。元々強くもなかったものですが、気持ち悪いくらい敏感で、良い思いをすることがありません。病気だと言われたりもしました。そのようにいわれてしまうようなことをやってきました。また言いますが、こんなことはどうだっていいのです。今普通になっていられれば。あのときのことを思い出すから私は動けないのです。授業を休むだけで何かが自分の中で変わって、次の週から健康になれると信じているのです。過去に自分の恐怖を置いてきてしまったから、今こうして苦しいのでしょうか。救ってくれたキンモクセイを千切って食べていれば何かが変わっていたのでしょうか。
私は物語の中で生きているのです。
そう締めくくられて終わっていた手紙の主は、昨日灰になって海に撒かれたらしい。彼女らしい最後だ。といえば満足してくれるだろうか。最後まで本当のことを誰にも言わないで、死ぬ前に手紙にしたためて、何がしたかったのかと聞けば彼女はなんと言うのだろう。悲劇のヒロインを気取ったのだろうか。きっと彼女は
「悲劇のヒロインを諦めたのだ」
彼女がいなくなっても、世界は回るし、僕はものを食べなきゃ生きていけないし、セックスだってしたくなる。眠りだってするし、それが普通だ。彼女は何に悩んでいたのか、僕の知れるところではないが、きっとこの文章を僕が書くことで彼女は満足してくれるだろう。亡くなった恋人を想って書いた僕の手紙。でも、君のした計算外のことをしたくなったから、僕はこれを遺していくよ。どこに行くのかって、野暮なことはききなさんな。すぐに追いついてあげるよ。
結局は二人とも物語の中で生きていたかったんです。二人の友人代表として言います。
ばーか
数学の先生が言っていたことを思い出した。人の持ってる忘れるという機能はすばらしい、とかなんとか。
そんなことはしったこちゃあねえのです。私は今この私が変わっていって今書き綴っている時に感じているものを感じられなくなることの方が怖いのです。物事を忘れるのが怖いんじゃないのです。その時に何を感じていたかが思い出すことが出来なくなることが怖いのです。赤いマニキュアを爪にぬり、適当な髪ゴムで髪を結って、明日の授業をさぼってしまえばすべて楽になると考えている単純で馬鹿な自分がこの文章を打っている時に何を考えているのかが怖いのです。思春期にやらなければいけないことをさぼったせいで、私の体は人より脆く出来上がってしまいました。精神も同様です。元々強くもなかったものですが、気持ち悪いくらい敏感で、良い思いをすることがありません。病気だと言われたりもしました。そのようにいわれてしまうようなことをやってきました。また言いますが、こんなことはどうだっていいのです。今普通になっていられれば。あのときのことを思い出すから私は動けないのです。授業を休むだけで何かが自分の中で変わって、次の週から健康になれると信じているのです。過去に自分の恐怖を置いてきてしまったから、今こうして苦しいのでしょうか。救ってくれたキンモクセイを千切って食べていれば何かが変わっていたのでしょうか。
私は物語の中で生きているのです。
そう締めくくられて終わっていた手紙の主は、昨日灰になって海に撒かれたらしい。彼女らしい最後だ。といえば満足してくれるだろうか。最後まで本当のことを誰にも言わないで、死ぬ前に手紙にしたためて、何がしたかったのかと聞けば彼女はなんと言うのだろう。悲劇のヒロインを気取ったのだろうか。きっと彼女は
「悲劇のヒロインを諦めたのだ」
彼女がいなくなっても、世界は回るし、僕はものを食べなきゃ生きていけないし、セックスだってしたくなる。眠りだってするし、それが普通だ。彼女は何に悩んでいたのか、僕の知れるところではないが、きっとこの文章を僕が書くことで彼女は満足してくれるだろう。亡くなった恋人を想って書いた僕の手紙。でも、君のした計算外のことをしたくなったから、僕はこれを遺していくよ。どこに行くのかって、野暮なことはききなさんな。すぐに追いついてあげるよ。
結局は二人とも物語の中で生きていたかったんです。二人の友人代表として言います。
ばーか
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「あ、いや」
と言って気まずそうな顔をしたあなたを私は忘れてません。一目惚れとかそういうのではなく、私と誰を間違えたんですか。私とあなたの関係をどこからどこから言えばいいんですか。夜の町で「ちょっとまってよ」って腕を掴んだあなたは私とお付き合いしていましたよね。私と貴方の休日がやっと合って、遊ぼうって話になってそれを腹痛でドタキャンしたのはどなたですか。私の少し向こうを走りながら去っていく女性は誰ですか。まあいろいろ聞きたいことは、本当にいろいろありますが、あなたにディープキスかましちゃう私はやっぱり性癖が歪んでいますね。
気づかないふりをした私にすっかり気をよくしたあなたはへらへらしながら私の家に来ました。それでいいのです。私はあなたの体にすがって、こういうのあの娘もしたのかなーとか思いながら興奮するのです。キスをしながら、あの娘はと、上に乗りながら、あの清楚そうな子もこんなに乱れたのかしらとか、それをあなたはどんな目で見ていたのかしら、とか。考え始めたら止まらないくらい胸くそ悪くて興奮するのです。
とりあえず、寝取られたんじゃなくて、寝取らせてんのよ
と言って気まずそうな顔をしたあなたを私は忘れてません。一目惚れとかそういうのではなく、私と誰を間違えたんですか。私とあなたの関係をどこからどこから言えばいいんですか。夜の町で「ちょっとまってよ」って腕を掴んだあなたは私とお付き合いしていましたよね。私と貴方の休日がやっと合って、遊ぼうって話になってそれを腹痛でドタキャンしたのはどなたですか。私の少し向こうを走りながら去っていく女性は誰ですか。まあいろいろ聞きたいことは、本当にいろいろありますが、あなたにディープキスかましちゃう私はやっぱり性癖が歪んでいますね。
気づかないふりをした私にすっかり気をよくしたあなたはへらへらしながら私の家に来ました。それでいいのです。私はあなたの体にすがって、こういうのあの娘もしたのかなーとか思いながら興奮するのです。キスをしながら、あの娘はと、上に乗りながら、あの清楚そうな子もこんなに乱れたのかしらとか、それをあなたはどんな目で見ていたのかしら、とか。考え始めたら止まらないくらい胸くそ悪くて興奮するのです。
とりあえず、寝取られたんじゃなくて、寝取らせてんのよ
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シャコシャコ、歯を磨いている女が好きだ。なぜ女なのかというと、それは俺が男だからだ。アブノーマルな性癖だとは思っていないが、少しかわっているとは思う。歯磨きしてる女の口の中に指を突っ込みたい。別にそこから変なセックスに発展したいわけじゃない。俺には妹がいた。いたという過去形になっているのはそいつが今はいないからだ。まあそれは置いといて、俺は妹の歯を磨くのが好きだった。眠そうな顔で愛らしい口をあーーと開いて、無防備に俺の持ってる歯ブラシを受け入れる妹がかわいくて仕方なかった。この妹の無防備な顔が本当に好きだった。これを小学6年生まで続けていたものだから、恐ろしい兄と妹であった。反抗期が来ても俺は妹の歯だけは磨いていた。まあ今はもうそれは叶わなくなってしまったのだけど。
「兄貴」
「おい」
「兄貴ってば」
「うるせえなんだ」
「いいかげん受け入れてくれよ」
現在弟となった我が妹は、毎晩俺のところに歯ブラシを持ってやってくる。
「俺がお前のその顔に弱いの知ってるからそういうことすんのか」
「別にー」
「じゃあなんで二十歳の、しかも男になった妹の歯を磨かなきゃならないんだ?」
俺はソファに寝そべりながら、男になった妹に目を向ける。
「お兄ちゃん」
見た目は少しひげが伸びた男なのに、声はまだ少し女で。
「泣かないでよ」
「泣いてねーよ」
鼻水出てきた。だが俺は泣いていないのだ。
「また歯磨きしてよ」
「なんでだよお」
「俺を受け入れてよ」
弟の声が震えたことに気づいた俺は、ソファから飛び起きた。
「お兄ちゃんは男だから、体と一緒だから」
「俺は弟になっちゃだめなのかよぉ」
妹の葛藤も知っていた。親に内緒でホルモン注射を打ったりしようとして家族会議になったこともある。今では親は何もかもをあきらめて、俺とこいつは二人で暮らしてる。
「だめじゃねえよ」
だめじゃねえけど、大の男二人がぐずぐずと泣いている姿はひどく気持ち悪いから、とりあえず泣き止もう。
俺はそう思いながら、涙をぬぐい、弟から歯ブラシを奪い取って、大口あけて泣いているその無防備な口に突っ込んだ。
「兄貴」
「おい」
「兄貴ってば」
「うるせえなんだ」
「いいかげん受け入れてくれよ」
現在弟となった我が妹は、毎晩俺のところに歯ブラシを持ってやってくる。
「俺がお前のその顔に弱いの知ってるからそういうことすんのか」
「別にー」
「じゃあなんで二十歳の、しかも男になった妹の歯を磨かなきゃならないんだ?」
俺はソファに寝そべりながら、男になった妹に目を向ける。
「お兄ちゃん」
見た目は少しひげが伸びた男なのに、声はまだ少し女で。
「泣かないでよ」
「泣いてねーよ」
鼻水出てきた。だが俺は泣いていないのだ。
「また歯磨きしてよ」
「なんでだよお」
「俺を受け入れてよ」
弟の声が震えたことに気づいた俺は、ソファから飛び起きた。
「お兄ちゃんは男だから、体と一緒だから」
「俺は弟になっちゃだめなのかよぉ」
妹の葛藤も知っていた。親に内緒でホルモン注射を打ったりしようとして家族会議になったこともある。今では親は何もかもをあきらめて、俺とこいつは二人で暮らしてる。
「だめじゃねえよ」
だめじゃねえけど、大の男二人がぐずぐずと泣いている姿はひどく気持ち悪いから、とりあえず泣き止もう。
俺はそう思いながら、涙をぬぐい、弟から歯ブラシを奪い取って、大口あけて泣いているその無防備な口に突っ込んだ。
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自分のことを押し込めて、なんて綺麗な言い方は辞めて、自己犠牲を尊く美しいと思い、私は生きてきました。このことについて、何かしら同情ややっかみがあったりすることは対した問題ではないのです。ただ私は、自己犠牲が好きなのですから、その面倒なのもひっくるめて自己犠牲にしてしまえますから、とても便利な精神を持つことが出来ました。言いたいこと、自分の意思を持ったところで、私はそれを犠牲にするのが好きですから、どんどんと自分というものが確立できなくなってきました。危ないと言われましたが、それもわからないくらいに盲信していたのです。自己犠牲、可哀想だと思われる私、良いやつだと思われたいんだろと貶される私、自分がどんどん美しくなっているように思えます。
自己犠牲が好きな私は、いつもいつでも、身を引くことに関しては命をかけていました。恋愛、仕事、よくわからない厄介ごと、引き受けるところと、引くところ、上手く自分が犠牲になれるところを見極めます。特に恋愛なんかはそうです。自己犠牲のために付き合って、自己犠牲で別れます。嫌われたり、好かれたり、そんなことを繰り返すうちに、何が好きかもわからなくなりました。しかし、それが良いのです。こんな可哀想で愚かな私、がとてもかわいい。
なぜ私がこのようなことを考えてるのかといいますと、目の前で同僚と同僚が殺し合いをし、その罪をなすりつけられている最中だからです。多分私は死んだ彼に恋をしていました。好きというのが、わかりませんが。私は今拘置所に身をおいています。自己犠牲が好きな私に相応しい最後です。それが手にはいる最後のチャンスです。私は紙に、申し訳ありませんでした。痴情のもつれでした。となんとか書きまして、渡された毛布を細長く折り、格子にひっかけ首を通します。そして目を瞑り、体の力を抜いて行きます。
あの世であの方と会えるのかなあとか、好きでした、とどう伝えようかとか、そんなことを楽しみに考えながら
自己犠牲が好きな私は、いつもいつでも、身を引くことに関しては命をかけていました。恋愛、仕事、よくわからない厄介ごと、引き受けるところと、引くところ、上手く自分が犠牲になれるところを見極めます。特に恋愛なんかはそうです。自己犠牲のために付き合って、自己犠牲で別れます。嫌われたり、好かれたり、そんなことを繰り返すうちに、何が好きかもわからなくなりました。しかし、それが良いのです。こんな可哀想で愚かな私、がとてもかわいい。
なぜ私がこのようなことを考えてるのかといいますと、目の前で同僚と同僚が殺し合いをし、その罪をなすりつけられている最中だからです。多分私は死んだ彼に恋をしていました。好きというのが、わかりませんが。私は今拘置所に身をおいています。自己犠牲が好きな私に相応しい最後です。それが手にはいる最後のチャンスです。私は紙に、申し訳ありませんでした。痴情のもつれでした。となんとか書きまして、渡された毛布を細長く折り、格子にひっかけ首を通します。そして目を瞑り、体の力を抜いて行きます。
あの世であの方と会えるのかなあとか、好きでした、とどう伝えようかとか、そんなことを楽しみに考えながら
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怖いのです。と、独白を始めた。手には読んだことのない本が開かれている。映画のワンシーンだ。彼女は何が怖いのか、つらつらと語りだした。
小さい頃から何事にも興味を持ったフリしかできませんでした。楽しいと感じられることがないのです。私はこの世界の人間ではないのではと思っていました。だって、夢の世界では私はとても楽しいんです。何が、とは言えないのですがとても楽しいのです。怖い夢も何度も見ましたが、夢の中では空も飛べましたし、弾けない楽器も弾けました。勉強だってよく出来て、志望校に合格し、親の期待にも答えることが出来たのです。なんだって出来る。もちろん努力はします。誰かの興味の対象になることも出来ました。私もその人に興味を持つ今ここにいて、しゃべっている私にはお付き合いしている人がいますが、その人から私へ興味があると感じられません。同様に私も彼に興味を持てないのです。
そこで彼女は顔をあげた。そしてまた語りだす。
私とあなたの話。あなたがどんなに甘くて砂糖漬けのレモンを模した恋愛を夢みていても、私はそれに答えられないの。ここは私の場所じゃないの。
しばらくの沈黙の後、僕はカメラを机に置いた。
「これ考えるのに何週間かかったの?」
「思いついてから、一日もたってないわ」
彼女が席を立とうとするので、腕をつかむ。
「よく僕の台本と自分の別れ話を混ぜられたね」
「だってこれは私とあなたの別れ話よ」
レンズ越しじゃない彼女をこんな間近で見たのはいつぶりかな。そんなことを考えながら僕は無理矢理彼女にキスをした。
小さい頃から何事にも興味を持ったフリしかできませんでした。楽しいと感じられることがないのです。私はこの世界の人間ではないのではと思っていました。だって、夢の世界では私はとても楽しいんです。何が、とは言えないのですがとても楽しいのです。怖い夢も何度も見ましたが、夢の中では空も飛べましたし、弾けない楽器も弾けました。勉強だってよく出来て、志望校に合格し、親の期待にも答えることが出来たのです。なんだって出来る。もちろん努力はします。誰かの興味の対象になることも出来ました。私もその人に興味を持つ今ここにいて、しゃべっている私にはお付き合いしている人がいますが、その人から私へ興味があると感じられません。同様に私も彼に興味を持てないのです。
そこで彼女は顔をあげた。そしてまた語りだす。
私とあなたの話。あなたがどんなに甘くて砂糖漬けのレモンを模した恋愛を夢みていても、私はそれに答えられないの。ここは私の場所じゃないの。
しばらくの沈黙の後、僕はカメラを机に置いた。
「これ考えるのに何週間かかったの?」
「思いついてから、一日もたってないわ」
彼女が席を立とうとするので、腕をつかむ。
「よく僕の台本と自分の別れ話を混ぜられたね」
「だってこれは私とあなたの別れ話よ」
レンズ越しじゃない彼女をこんな間近で見たのはいつぶりかな。そんなことを考えながら僕は無理矢理彼女にキスをした。
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学校の隣の馬鹿な男子が、俺性交に成功した〜!とかどうでもいいギャグを言ってるもんだから殴りたくなって、頭の中でシャーペンを耳に突き刺してやった。全身ギラギラで揃えてる女子高生が歩道をミチミチと埋めて居るのを見ては、そいつ等1人ずつに手裏剣を投げて仕事人になりきる。ほんの少しの妄想がないと、皆生きていけないのだ。だから私は発想力のないにんげんはとても気持ち悪いと思う。嫌いとかじゃなくて気持ち悪いのはなぜか。それはもうそいつは人間じゃないと思うからだ。人を殺したとかいうニュースを見て思うのだ。頭の中で殺せばいいのに。実際に手に掛けるなんて、なんて想像力の無い奴らなのだろうと。そいつらに対して、近所の住民は、そんなことするような人だと思えません…と口を揃えて言うじゃないか。想像力がないからそうなるんだ。と私は思う。なんでいきなり語り出したのかと言えば、今私が、そんなことやる奴じゃないと思っていた人間にカッターで腹部を刺されているからである。
動機はわからないと言っています。何かむしゃくしゃしたから隣の女の子を刺して、犯そうと思った。精神鑑定、しますか?
動機はわからないと言っています。何かむしゃくしゃしたから隣の女の子を刺して、犯そうと思った。精神鑑定、しますか?
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のみこんだら思い出せない言葉がたくさん腹の中にたまっていて、最近吐くようになってしまった。
我慢しすぎたのだよ、と優しく諭す声に伝えたかった言葉ものみこんだ。街のクリニックの駐車場で吐く。
居なくなりたいと思うのは駄目ですか、逃げたあいつを殺すのも駄目ですか。
のみこんだ言葉は私の消化器を刺激する。車の音が耳障りだ。セミの声も、子供のはしゃぐ声も、私はのみこんで吐き出すのだ。吐くのが癖になった私を止めようとするやつは居ない。別に居なくて良い。困ってないし、吐かないと胃がパンクする。フェンスに捕まって、炎天下の中歩き出そうとした時、足元にある靴に気付いた。誰かが私の吐瀉物を踏みつけている。顔をあげると、胸ぐら掴まれいきなりたたされた。気持ち悪い、視界がかすむ、でもわかる、こいつは私が殺したいくらい憎い男だ。吐きすぎて上手くしゃべれない私の口を男は塞いだ。胃液にまみれた私の咥内をなめる。
「しんでくれ」
「過度のストレスによる胃炎、それと熱中症」
「しねよぉ」
「何泣いてんだよ馬鹿女。」
「泣いてねぇよぉ」
男は私の胸ぐらを掴むのをやめ、軽やかに背負った。
「うあぁぁぁおぇっうあぁげぼっ」
「泣きながら吐くなよ」
お前とくっついてるとこあちーなぁ。ほんとにお前馬鹿だよなぁ。
疲れた、辛い、助けても言えねえんだもんな。
男が皮肉るように笑うので私は涙を抑えきれなくなった。
「おめーの胃液すっぱいし苦えし最悪だなあ。」
「うっうぅ…」
「もう休んでいいから、寝ろよ」
「お前に殺されるまでついているから安心しろ」
我慢しすぎたのだよ、と優しく諭す声に伝えたかった言葉ものみこんだ。街のクリニックの駐車場で吐く。
居なくなりたいと思うのは駄目ですか、逃げたあいつを殺すのも駄目ですか。
のみこんだ言葉は私の消化器を刺激する。車の音が耳障りだ。セミの声も、子供のはしゃぐ声も、私はのみこんで吐き出すのだ。吐くのが癖になった私を止めようとするやつは居ない。別に居なくて良い。困ってないし、吐かないと胃がパンクする。フェンスに捕まって、炎天下の中歩き出そうとした時、足元にある靴に気付いた。誰かが私の吐瀉物を踏みつけている。顔をあげると、胸ぐら掴まれいきなりたたされた。気持ち悪い、視界がかすむ、でもわかる、こいつは私が殺したいくらい憎い男だ。吐きすぎて上手くしゃべれない私の口を男は塞いだ。胃液にまみれた私の咥内をなめる。
「しんでくれ」
「過度のストレスによる胃炎、それと熱中症」
「しねよぉ」
「何泣いてんだよ馬鹿女。」
「泣いてねぇよぉ」
男は私の胸ぐらを掴むのをやめ、軽やかに背負った。
「うあぁぁぁおぇっうあぁげぼっ」
「泣きながら吐くなよ」
お前とくっついてるとこあちーなぁ。ほんとにお前馬鹿だよなぁ。
疲れた、辛い、助けても言えねえんだもんな。
男が皮肉るように笑うので私は涙を抑えきれなくなった。
「おめーの胃液すっぱいし苦えし最悪だなあ。」
「うっうぅ…」
「もう休んでいいから、寝ろよ」
「お前に殺されるまでついているから安心しろ」
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